2020年春、映画館でバレエ版「ロミオとジュリエット」が公開されています。舞台版よりも短くなっている映画版。ですが内容は基本的に同じです。

今回はこの「ロミオとジュリエット」のあらすじをまるっとご紹介します。

  • 第2幕
  • 第3幕
  • 感動的なカーテンコール
  • ※5分ほどで読み終わる記事です。マクミラン版の「ロミオとジュリエット」を完全解説します。

    記事を書いているのは…
    元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり。ぜひ男性にもバレエを観に行ってもらいたいと思っています。

    マクミラン版ロミオとジュリエット完全解説

    あらすじ

    「ロミオとジュリエット」は、たった5日間の話です。ロミオの年齢は16歳~18歳、ジュリエットは14歳(もしくは14歳になる直前)といわれています。

    1日目:

    モテ男ロミオはロザラインというキャピュレット家の女性に恋をしています。いつもケンカばかりするキャピュレット家(ジュリエット)とモンタギュー家(ロミオ)。この日も騒動が起こり死人まででてしまう始末。ヴェローナ大公はご立腹。

    その日の夜、ロミオはロザラインを追ってキャピュレット家の仮面舞踏会に侵入。そこでジュリエットと運命的な出会いをし、恋に落ちてしまいます。結局、ロミオはバレてしまいティボルトはカンカン。ですが、舞踏会という場であったため、追い出されることなくその場は収まります。

    深夜、ロミオは再度キャピュレット家に戻ってきます。そこでバルコニーで佇むジュリエットと愛を誓い合うのでした。

    2日目:

    朝方、みんなのもとに戻るロミオ。そこにジュリエットの乳母が手紙を持ってやってきます。そこには「結婚」の文字が・・・。すぐにロミオはジュリエットが待つ教会に駆けつけ、ローレンス神父のもとふたりは結婚します。

    ロミオはジュリエットと一度わかれ、再度みんなのもとに戻ります。するとキャピュレット家とモンタギュー家が例のごとくいざこざ。このときティボルトがロミオの親友であるベンヴォーリオを殺してしまいます。これに激怒したロミオがティボルトを殺してしまいます。そして、ロミオはヴェローナから追放されてしまいます。

    その夜、ロミオはジュリエットのもとに駆けつけ失意の中、一夜をともにします。

    3日目:

    早朝、ヴェローナに居場所がないロミオは出ていってしまいます。何も知らないキャピュレット家の人々は、ジュリエットに婚約者パリスとの結婚を強要。ジュリエットはローレンス神父に相談にいきます。そこで自分を仮死状態にできる薬を手に入れ、ローレンス神父はジュリエットの伝言をロミオに伝えることを約束します。

    4日目:

    ジュリエットとパリスの結婚を控えるキャピュレット家。朝、ジュリエットの遺体が発見されます。もちろん、これは仮死状態で実際に死んでいるわけではありません。

    5日目:

    ジュリエットの葬儀が行われます。葬儀が終わった後やってくるロミオ。そして、ロミオにはジュリエットからの伝言は届けられることはありませんでした。そのためロミオはジュリエットが死んでしまったと勘違いしてしまいます。

    失意の中、ロミオはナイフで自分を刺し、息を引き取ります。その直後、ジュリエットが仮死状態から目覚めます。ロミオに気づくジュリエット・・・。最初は喜ぶものの何かおかしいことに気づきます。ロミオが死んでいることに気づき、ジュリエットもナイフで自分を刺しなくなってしまうのでした。

    【上演時間】
    第1幕:60分
    第2幕:35分
    第3幕:40分

    【スタッフ】

    振付:ケネス・マクミラン
    音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
    美術:ニコラス・アディス
    照明:ジョン・B.リード

    裏側に関してはこちらの記事をどうぞ。

    主なキャラクター

    ロミオはロメオと表記されることがあります。僕はロミオという響きが好きなので、ロミオで統一しています。

    ・キャピュレット家
    ジュリエット
    ティボルト:ジュリエットのいとこ
    パリス:ジュリエットの婚約者
    キャピュレット卿:ジュリエットの父
    キャピュレット夫人:ジュリエットの母
    乳母:ジュリエットを支える存在
    ロザライン:ロミオが一目惚れする

    ・モンタギュー家
    ロミオ
    マキューシオ:ロミオの友人
    ベンヴォーリオ:ロミオのいとこ
    三人の娼婦:ロミオと仲がいい

    ローレンス神父:結婚をとりしきり、毒を手配する
    エスカラス(ヴェローナ大公):ヴェローナを統治

    マクミラン版の見どころ

    マクミラン版の「ロミオとジュリエット」はジュリエットの視点で描かれています。そのためキャピュレット家がメインで、ジュリエットの心理の変化が細かく描かれています。

    踊りとしてはロミオとジュリエットが一緒に踊る3つのパ・ド・ドゥが見せ場です。

    1つ目は第1幕最後の「バルコニーシーン」。初恋の喜びに満ち溢れた踊りで、後半部分はリフトがたくさんでてきます。ロミオとジュリエットがふたりで描き出すラインの美しさが、ふたりの心が溶け合っているのを表しているかのようです。

    2つ目はティボルトを殺してしまったロミオがヴェローナの街から去る直前の別れの場面です。これは3幕の1番最初で踊られます。

    そして3つ目は仮死状態で力が抜けているジュリエットと踊るロミオのシーンです。これは作品の最後、霊廟で踊られます。

    この3つのパ・ド・ドゥでは同じ振付や同じ旋律が登場します。1つ目のパ・ド・ドゥは幸せですが、あとの2つは悲しみにあふれています。悲しい踊りに1つ目の幸せにみちた振り付けが入っていることで、より悲しみが増します。同じ振付なのに、喜びと絶望が表現できるマクミラン。マクミラン版が評価されているのはこういう理由があります。

    ここからはシーンを細かく見ていきます。

    第1幕

    第1幕は、第1日目です。

    広場にて

    ロザラインを追っかけているロミオ。ここではいろいろな対立があります。まずはキャピュレット家とモンタギュー家の対立。そして、娼婦3人が出てくるのですが、市民からは鼻つまみもののように扱われています。そんな中、ロミオは娼婦たちにも優しく接します。

    最初に登場するのはロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオの兄弟のように仲のいい3人。マキューシオは小回りのきく小柄でテクニックのあるダンサーが踊ることが多く、ベンヴォーリオはこれから成長が期待されるダンサーが配されることが多いです。

    この3人の踊りはとても細かいステップが多用されるので、舞台映えする大きいダンサーがきっちり踊っているとスゴイです。そして3人の娼婦は「ロミオとジュリエット」の中でジュリエット以外に踊る唯一といっていい女性ダンサーです。トウシューズではなく、ダンスシューズを履いているもの特徴です。

    そしてティボルトが登場し、キャピュレット家とモンタギュー家の争いが広場ではじまります。ロミオの父と母、ジュリエットの父と母も登場し、ガチンガチン剣を振り回します。この決闘のシーンがとても迫力があります。そして何人もの死人が出た後、大公が登場。この場を収めます。

    衣装の色がキャピュレット家は赤、モンタギュー家は緑なので視覚的にとてもわかりやすいです。ロミオの父と母はこのシーンしか登場しません。ここからはキャピュレット家を中心に話が展開していきます。

    ジュリエット初登場

    人形で遊ぶジュリエット。乳母と一緒に遊ぶ姿はまだ幼いです。そこにジュリエットの父母が婚約者となるパリスを連れてやってきます。パリスが去るとまた乳母と一緒に遊びはじめます。そこで乳母がジュリエットに、大人になったことを悟らせます。ここでパッと舞台の照明が落ちます。

    このシーンはとてもむずかしいシーンで、最後にジュリエットが自分の胸を両手で押さえる振り付けがあります。ジュリエットは胸が成長していることで大人になったことを悟ります。この照明が落ちる直前の表情がダンサーごとに違います。でもいまいち納得できたことがないので、まだ正解が見つかっていません。

    キャピュレット家の前

    仮面舞踏会がはじまる直前のキャピュレット家に招待客が続々と登場します。そこにやってくる、ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオ。ロミオのお目当てであるロザラインにちょっかいを出しつつ、バレないようにちょこちょこ動き回る3人。招待客が全員キャピュレット邸に入った後、3人の踊りがはじまります。

    3人のテクニックが堪能できるシーンです。そして最後にロミオがものおもいにふけるシーンでバルコニーシーンで使われる音楽が流れます。ここでジュリエットとの出会いの予感を感じさせてくれます。

    仮面舞踏会

    このシーンは重々しい音楽からスタートします。いろんなところでこの音楽は使用されているのでかなり有名な曲です。


    Prokofiev Romeo and Juliet — Ball Scene (Macmillan)

    そしてジュリエットが登場し運命のシーンが登場します。

    出会いのシーン

    僕が、必ずチェックするポイントがあります。それは、ふたりの出会いのシーンです。

    ロミオはロザライン目当てに忍び込むのですが、ジュリエットに一目惚れしてしまいます。

    ロミオが先にジュリエットに気づくのですが、ジュリエットはその時婚約者のパリスと踊っています。その時のロミオにはスポットが軽く当たっているのですが、どうしてもジュリエットとパリスに目が行ってしまいます。ですが見どころはロミオです。

    このシーンで熱いロミオを演じているダンサーを何人もみてきました。そんな熱いロミオがいると、その後のストーリーがとても楽しみになります。

    そして、パリスがジュリエットの手にキスをすると、ジュリエットが照れて後ろへ・・・。

    バチン!!!

    ロミオとジュリエットが初めて出会います。ふたりに電気が走るシーンです。ロザラインを追っていたロミオが、気づいたらジュリエットに一目惚れしている過程は生の舞台でしか追うことができません。


    Romeo and Juliet – Juliet and Paris Act I pas de deux 4K (MacMillan; Takada, Mock; The Royal Ballet)

    舞踏会は進んでいきます

    そして舞踏会では登場人物が出たり入ったりを繰り返し展開していきます。

    クライマックスはロミオがティボルトにバレてしまうシーン。ここでジュリエットもロミオがモンタギュー家の人間であることがわかります。そして、パーティーがお開きとなります。

    バルコニーシーン

    1幕最後の一番の盛り上がるシーンです。有名な「ああ、ロミオ。どうしてあなたはロミオなの」のシーン。

    曲は厳密には3曲に分かれています。
    ➀バルコニーの情景
    ➁ロメオ(ロミオ)のヴァリアシオン
    ⓷愛の踊り

    ロミオとジュリエットの中で一番幸せなシーンです。ここから先は悲劇をただただひた走っていくので、このシーンがどれだけ幸せかで舞台の出来が左右されるシーンです。


    Romeo & Juliet.wmv

    僕がはじめて観たのは映画「センターステージ」での抜粋です。この映像は比率が変なので見づらいんですが、好きなシーンなので載せさせてください。あと音楽の音程も少し違います。0:49の曲が変わると同時に足をぐるっと回す(ロンデ)の振付がとにかく好きで好きで・・・。

    このセットもスゴイ好きです。後ろに浮かびあがる月と遠近法でえがかれる町並み。踊るのはアメリカン・バレエ・シアターを支えたジュリー・ケントとイーサン・スティーフィル。

    この感動的なシーンで第1幕が終わります。

    第2幕

    第2幕では、あらすじでいう2日目です。

    広場にて

    ロミオ以外のみんなが広場でいつもどおり騒いでいます。そんな中ロミオが登場。ですがいつもと違い、娼婦たちにつれないロミオ。

    ここで街の住人の結婚式が行われます。そしてマンドリンダンスという道化に扮した男性ダンサーたちの見せ場のシーンも登場。

    そして乳母が登場し、ロミオにジュリエットに手紙を届けます。とてもコミカルなシーンになっています。手紙を受け取ったロミオは急いでジュリエットのもとに向かいます。

    広場のシーンでは群舞の踊りが華やかに踊られます。コミカルな場面も多く、悲劇の中にある楽しいシーンです。

    結婚

    ローレンス神父のいる教会でロミオとジュリエットは秘密の結婚式をあげます。とても質素な教会で、たぶんふたりがふだん通う教会とは違う教会に行っているのではないか、と思わせるような雰囲気です。

    広場での決闘

    そして広場のシーンに戻ってきます。ここでちょっと酔っ払った風のティボルトが登場。そしてまた戦いが始まります。ティボルトを挑発するマキューシオ。ここで結婚式を終えたロミオが帰ってきます。

    いつもと違いロミオはティボルトと戦おうとしません。それもそのはず、ジュリエットと結婚したことで親戚になったという自覚があるからです。どうにかマキューシオとティボルトの決闘をやめさせたいロミオ。これが逆に災いし、ふだんなら絶対にやられないような場所でティボルトがマキューシオに致命傷を追わせてしまいます。

    このシーンはとにかくマキューシオの熱演が光るシーンです。致命傷を追った後も、ふざけてみせたり、個性にあふれています。ここのシーンから踊りよりも演劇的なシーンがどんどん増えていきます。マキューシオは絶命する直前、ロミオとティボルトを指差し両家の愚かさを罵ります。

    親友を失ったロミオ。頭に血が上りティボルトに一気に襲いかかります。そして、ティボルトを殺してしまいます。ここでジュリエットの母が登場し、まるで自分の息子が死んだかのように悲しみます。自分のしたことを悔い、ジュリエットのお母さんにすがるロミオ・・・。思いがどんどんすれ違っていく、とても悲しいシーンです。

    実は裏設定があるという説もあります。ジュリエットの母はティボルトと不倫関係にあるという設定があるそうで、ティボルトがロミオに殺され半狂乱状態に・・・。


    Sword fighting in Romeo and Juliet (The Royal Ballet)

    ジュリエットのお母さんの嘆きで2幕が重々しく終わります。

    第3幕

    第3幕は3日目から最後の5日目までが描かれます。 

    ジュリエットの部屋

    ジュリエットと一夜を過ごしたロミオ。朝ひとり目覚めます。そのままジュリエットに何も告げずに部屋を出ていこうとするロミオ。ふとジュリエットが起き、最後にロミオと一緒に踊ります。

    これがふたりが最後に意思を交わすシーンです。音楽はバルコニーシーンの旋律が使われつつ、時にマイナーな音が入ります。

    パリス登場

    何もしらないジュリエットのお父さんとお母さんが婚約者のパリスを連れてきます。そして結婚することを決めてしまいます。ジュリエットにはその気がまったくありません。言うことを聞かない娘に腹を立てた、お父さんお母さん、そして立場上かばいきれない乳母。最後にはお父さんにひっぱたかれ、皆が部屋から出ていってしまいます。

    このシーンではジュリエットがパリスと踊るシーンがあります。ですが、ジュリエットは踊る気がまったくありません。死んだように踊るジュリエットとそれをサポートするパリス。直前のロミオとのシーンとのギャップがとにかくすごいシーンです。

    ジュリエットがひとり

    部屋に取り残されたジュリエット。ここでこれからどうするか、13歳の少女がひとりで考えます。

    ジュリエットを何十年も踊り続けた吉田都さんがとても重要なシーン、と何かの番組で語っていたのを覚えています。

    このシーンでジュリエットがただベッドに腰掛け舞台正面を見続けるシーンがあります。その時間は40秒ほど。この中にドラマがつまっています。

    ローレンス神父に助けを求めに

    そしてローレンス神父に助けを求めるジュリエット。ここで仮死状態になる薬を手に入れます。

    結果としてジュリエットの伝言はロミオに伝えられることはなく、ふたりとも死んでしまうわけですが、ローレンス神父は何をやってんだか・・・、という。ロミオとジュリエットが死ぬことできっとキャピュレット家とモンタギュー家は和解への道を進むと思います。もし二人がハッピーエンドになっていたらもっと両家はもっと仲が悪くなった可能性が高い。

    そんな風にいろいろと想像してしまうシーンです。

    ジュリエットの部屋

    ジュリエットのお父さんとお母さんが、パリス、乳母が部屋に入ってきます。さきほどと変わらずパリスを拒否するジュリエット。でも最後にはパリスとの結婚を受け入れます。

    薬を飲む

    仮死状態になりロミオと結ばれることを決断するジュリエット。ですが、すんなり薬を飲めるはずもなく、葛藤します。そして苦しみながら仮死状態に入っていきます。

    翌朝

    ジュリエットの友人が登場。結婚準備のためにジュリエットの友人6人が登場します。ジュリエット以外にトウシューズ履くダンサーはこの6人のみです。この6人は1幕の舞踏会のシーンでも登場します。

    そしてジュリエットが死んでいることに気づきます。そこにウキウキと結婚準備をする乳母が登場。さらにジュリエットのお父さんとお母さんも登場し、ジュリエットが死んでいることに気づきます。

    乳母に関して、毎回謎に思います。というのも乳母はロミオとジュリエットの結婚をみていたのに、パリスとの結婚の準備をウキウキしています・・・。どういう心境なんでしょうか・・・。

    ジュリエットの葬儀

    ジュリエットの葬儀が終わり、パリスだけがジュリエットのそばに残ります。そこに何も知らないロミオが登場。パリスをあっという間に殺してしまいます。

    ここまでくるとパリスが気の毒でしかたないんですが、物語上しかたないです・・・。

    仮死状態のジュリエットと踊るロミオ。ふたりで組んで踊るんですが、ジュリエットがまるで死体のようです。心を通わせ合っていたふたりのはずなのに・・・。そして、ロミオは毒薬で自害します。

    その直後、息を吹き返すジュリエット。霊廟に入っていることに驚き、まわりを動き回ります。するとそこにはパリスの死体が・・・。後ずさると、そこにはロミオの死体が・・・。

    すべてを悟ったジュリエット。最後にロミオが残した短剣で自分を刺してしまいます。そして、ロミオのそばで最期をむかえるのでした。

    感動的なカーテンコール

    通常の出演者が登場するカーテンコールもあるのですが、幕が閉じた後ロミオとジュリエットだけがまず挨拶します。このカーテンコールがあるおかげで余韻にひたることができます。

    こちらはマクミランのミューズといわれた踊る舞台女優といわれるアレッサンドラ・フェリのDVD。アレッサンドラ・フェリのジュリエットは何度も見ました。40歳を超えたときも本当に少女のようでびっくりしたのを覚えています。

    本当に5日間のドラマをみているような気になるロミオとジュリエット。僕も今まで何回見たかわからないくらい見ていて、バルコニーシーンだけでも満足度が高いです。ぜひドラマティックバレエを堪能してみてください!

    ありがとうございました