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「眠れる森の美女」はどんなストーリー?
初心者でも楽しめる?
見どころは?

正直、バレエ版「眠れる森の美女」は難易度が高めです!

童話「眠れる森の美女」を知っていれば、たしかに楽しめます。ですが、超大作のため上演時間が長く、休憩を入れると3時間を超えてしまいます。

あまり慣れていない場合、もれなく寝てしまう可能性があります。もしデートだったら?友人と行ったら? 寝ていたのが笑い話になればいいですが、なかなか恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。

記事を書いているのは…

元劇団四季、テーマパークダンサー。舞台、特にバレエを観に行くのが大好きで、年間100公演観に行った記録あり。ぜひ男性にもバレエを観に行ってもらいたいと思っています。

kazu

今回は、「眠れる森の美女」の初心者でも楽しめる作品解説です。

※5分ほどで読み終わる記事です。この記事はバレエ鑑賞初心者の方のために書いています。初めて「眠れる森の美女」を観ても楽しめるよう映像で予習できるようになっています。バレエではいくつものバージョンがありますが、どのバージョンでもだいたいの話の流れは同じです。どのバージョンでも楽しめるような内容になっています。

このストーリー大丈夫?バレエ「眠れる森の美女」のあらすじと解説

外見至上主義なストーリー…

スーパーおおまかなストーリー

心優しく美しいオーロラ姫が、悪の精の呪いで100年の眠りにつきます。100年後、運命の王子がオーロラ姫をキスで起こし、呪いが破られます。

誰もが知っているこのストーリー。王子はオーロラ姫を外見で選び、起こした瞬間ふたりは恋に落ち、結婚してしまいます…。

kazu

えっ!!!

特にストーリーを単純化したバージョンだと、内容の薄さに残念な思いになってしまうこともあります。

初演:1890年1月15日

ロシア:マリインスキー劇場

振付:マリウス・プティパ
音楽:チャイコフスキー
原作:シャルル・ペロー

1890年、ロシアで初演された「眠れる森の美女」は、帝政ロシアの繁栄はんえいを願った作品です。

古典バレエでは、男性の扱いがしょうもないこともあります…。男性にフォーカスが当たり始めたのは1960年頃からです。基本的にそれ以前、男性は女性のサポートがメインの仕事だったので、男性像をそこまで掘り下げるということがありませんでした。

そのため、王子がなんとも薄っぺらくなっています…。

バレエ団の繁栄を願う作品

とはいえ、バレエ「眠れる森の美女」は今も変わらず傑作バレエです。

とにかく豪華で、初演では休憩をふくめ4時間を超えました。出演人数も膨大だったので、主要な役を演じるダンサーでさえ、2役演じていました。

豪華すぎてお金もかかり、あまりに長いため、費用削減と飽きないような工夫がされていきます。上演時間・出演者を削ったり、ストーリーが変更されました。そうして細かいストーリの変更をしつつ、内容がどんどんシンプルになっていきました。

あまりに豪華なため、あるバレエ団では「眠れる森の美女」を上演したことで破産同然になってしまったこともあります(1920年ディアギレフが率いるバレエ・リュスでの出来事。このバージョンでもストーリーを大幅に削っていたのですが、お金がかかりすぎてしまいました…)。

特にチャイコフスキーの音楽が耳に残ります。チャイコフスキーは振付のマリウス・プティパからかなり細かい指示を与えられ作曲をしました。音楽が先にできたのではなく、振付の構成が先にできてから音楽が作られています。

かなり計算されて作られているので、王子の人物像を深くしようとすると曲を足す必要が出てきます。ですが、すでに上演時間が長いので、かなりの工夫が必要です。いろいろなバレエ団で新バージョンの「眠れる森の美女」が今も制作されています。

1999年、初演を行ったマリインスキー劇場で、1890年版の復刻が行われました。そのため、現段階ではマリインスキー・バレエ団の「眠れる森の美女」がもっともオリジナルに近いバージョンだといえます。

また、豪華なバレエのため、大きなバレエ団が発足するとき最初の公演(杮落こけらおとし公演)として選ばれることがあります。規模が小さいバレエ団では「眠れる森の美女」を上演できないので、「眠れる森の美女」を上演できれば一流のバレエ団の証明にもなります。日本の新国立劇場が開場したときも「眠れる森の美女」が杮落とし公演に選ばれました。

あらすじ

バレエ版は4つのパートに分かれています。

ストーリーの流れ

プロローグ(35分)…オーロラ姫が生まれたばかり
第1幕(30分)…オーロラ姫16歳の誕生日
第2幕(35分)…王子がオーロラ姫と出会い、助けるまで
第3幕(45分)…オーロラ姫と王子の結婚式

登場人物

登場人物は、わかりやすいようにディズニーの「眠れる森の美女」と比較していきます。

眠れる森の美女

Amazonより

バレエ版(ディズニー版)

オーロラ姫(オーロラ姫)・・・長い眠りにつく姫
デジレ王子(フィリップ王子)・・・オーロラ姫を救う運命の王子(フロリムント王子と呼ばれる時も)
カラボス(マレフィセント)・・・オーロラ姫に呪いをかける悪の精(バージョンによっては男性が演じることも!)
リラの精(フォーナ、フローラ、メリーウェザーがひとりになった感じ)・・・カラボスと同等の力を持つ善の精(踊るバージョンと踊らないバージョンがあります)

プロローグ

フランスのある宮殿で、誕生したばかりのオーロラ姫のお祝いが開かれます。国中から妖精が招かれ、オーロラ姫に「誠実」「優美」「寛容」「歓び」「勇敢」「気品」といった美徳を授けます。

ところが、悪の精カラボスはお祝いに招待されていませんでした。怒ったカラボスはオーロラ姫に「16歳の誕生日、オーロラ姫は糸紡いとつむぎの針に指を刺し、死ぬ運命となる」と呪いをかけます。

そこで、妖精をまとめるリラの精が、カラボスの呪いを弱めます。「オーロラ姫はたしかに糸紡いとつむぎの針に指を刺すでしょう。ですが、死ぬのではなく深い眠りにつくだけです。100年後、運命の王子があらわれ口づけによって目覚めることになるでしょう。」と死の呪いを弱めてくれました。

第1幕

美しく成長したオーロラ姫は16歳になり、誕生日のお祝いが開かれます。そこに隣国から4人の王子が招待されています。この中からオーロラ姫が結婚相手を選びます。

パーティーが進む中、見慣れない老婆がオーロラ姫に花束を渡します。喜ぶオーロラ姫。ですが、花束の中に糸紡ぎの針が隠されていました。オーロラ姫は針を指に刺し倒れてしまいます。

老婆の本当の姿はカラボスでした。呪いを実現したカラボスは去っていきます。

するとそこにリラの精があらわれ、約束通り呪いを弱めてくれました。深い眠りにつくオーロラ姫。リラの精は王宮の人々にも眠りの魔法をかけ、王宮を樹木で覆い深い森に隠してしまいます。

第2幕

100年後、デジレ王子が狩りを楽しんでいます。ですが、王子はどこか浮かない様子です。真実の愛を見つけらないことに悩んでいます。

そこにリラの精があらわれ、オーロラ姫の幻影げんえいを見せます。幻影に魅了された王子は、オーロラ姫を眠りから救い出すことを決意し、宮殿に向かいます。カラボスが行く手をはばみますが、リラの精の助けを借り、オーロラ姫を目覚めさせることに成功します。

第3幕

宮殿ではオーロラ姫とデジレ王子の結婚式が開かれています。

宝石の精、物語の主人公たち(青い鳥、長靴をはいた猫、赤ずきんちゃん、シンデレラなど)が登場し、ふたりの結婚を祝います。

盛大なお祝いの中、幕を閉じます。

初心者が押さえておくポイント

「眠れる森の美女」はとにかく長いので、最初からしっかり見ようとすると必ず集中力が切れます。

めがね

初心者の人はとにかく「オーロラ姫」を追っていきましょう。オーロラ姫を追うだけでも、ちゃんと楽しむことができます!!

「眠れる森の美女」はオーロラ姫の成長物語です。初々しいオーロラ姫、幻影の中の美しい理想の女性、大人に成長した気品あふれる姫。この3つの異なる性格をバレエ団のトップダンサーがどう表現するかを楽しむのがオススメです。

kazu

プロローグ、第1幕から第3幕までポイント絞って解説します。

プロローグ:かるい気持ちで

プロローグにオーロラ姫は登場しません。そのため、かるーい気持ちで見ていきましょう。

ストーリーが動き出すのは、後半の10分。カラボスが登場してからです。そこまではダンサーの踊りを楽しむ時間です。

めがね

前のめりで見続けているとかなり疲れてしまうので注意しましょう。

第1幕:最高難度の踊り「ローズ・アダージョ」

35分という長いプロローグが終わり、ようやく第1幕です。全員の踊りのあとオーロラ姫が登場します。

最大の見せ場は、オーロラ姫が4人の王子と一緒に踊る「ローズ・アダージョ」です。

ローズ・アダージョ

アダージョとは音楽用語で「ゆったり」という意味があります。

ゆったりしたテンポの踊りに、バラの花がポイントとなっているので「ローズ・アダージョ」と名付けられています。

アティチュードという片足立ちのポジションでずーっとキープし続ける振付が2回登場します。このバランスをどれだけ品よくキープできるか、観客が息をひそめて見守っているので、観客にも集中力が必要なシーンです。(物音や咳に注意です。)


(パリ・オペラ座バレエ団:オーレリー・デュポン)

2:40~3:00が、1つ目のアティチュード。
6:50~7:30が、2つ目のアティチュードです。

kazu

個人的に気になるのは、もらったバラをスパーン!!と投げる部分(6:41)。いつも笑っちゃうというか、不思議に見ています。

オーロラ姫は最高難度といわれています

オーロラ姫という役は数多くあるバレエ作品の中でも最高難度の役といわれています。

その理由は「いつもと違う踊りをしないといけないから」。どういうことかというと、オーロラ姫は古典的に踊ることが求められるため、現代のバレエのポジションと若干違います。例えるなら、普通の会話を古語で話しているような感じです。

この古典のポジションと現代のポジションのちょっとした違いで、いつも取れているバランスが崩れてしまいます。その代わり、古典的なポジションをとることで品位をあらわすことができます。

また、男性とふたりで踊るとき、普段より男性と女性のあいだに距離をとります。そのため、女性は自分自身で立つ時間が長くなり体力をかなり消耗してしまいます。

ローズ・アダージョではアティチュードでバランスを取りながらも、ちゃんと求婚者の男性ダンサーと目を合わせているか、顔があまりに真剣になりすぎて品がなくなっていないかが大きなポインです。オーロラ姫には常に品位が求められます。ローズ・アダージョは苦しそうな表情ひとつせずサラーっと踊っている人ほどスゴいです。

そして、オーロラ姫のソロの踊り、友人の踊りと続き、物語を進めるカラボスが登場します。カラボスのシーンからは物語がぐーっと動くので眠くなることはないと思います。

第2幕:ちょっと眠くなりがち

第2幕ではじめて王子が登場します。その名もデジレ王子。なかなかパンチのある名前です。

第2幕の前半は幻影のシーン、後半はカラボスと王子の対決、そしてオーロラ姫の目覚めるシーンです。

前半では、リラの精の助けによりデジレ王子がオーロラ姫と出会います。夢の中で出会うふたり。夢の中なので、音楽もゆったり。すでに第1幕までで1時間以上観ているのでだんだん眠くなってきてしまいます。森の妖精たちも登場し、かなり心地いい音楽が流れます。

はじめてオーロラ姫と王子が一緒 にパ・ド・ドゥ(2人の踊りという意味)を踊ります。主役二人の踊りは要チェックです!


(英国ロイヤル・バレエ団:金子扶生さん、ロベルト・ボネッリ)

このシーンが終わると王子が宮殿に向かい、カラボスとの対決になります。

躍動感のない対決

カラボスとの対決はけっこう躍動感がないことが多く、もしかしたらびっくりするかもしれません。

kazu

僕もいろいろなバージョンを観てきましたが、カラボスの横をサーっと通って、オーロラ姫にキス。

するとカラボスが勝手にほろんでしまう、というバージョンもありました…。

実質、この2幕で物語が終わります。

踊りだらけ:第3幕

第3幕はディベルティスマンと呼ばれます。

ディベルティスマン

ディベルティスマンはフランス語で「余興」という意味があり、バレエではストーリーに関係のない踊りのシーンのことをいいます。

第3幕はほぼディベルティスマンです。30分はオーロラ姫とデジレ王子が踊ることなく、おとぎ話のいろいろなキャラクターが舞台に出たり入ったり。長靴をはいた猫や赤ずきんちゃんはコミカルなので、緩急かんきゅうがついていて見やすくなっています。

最大の見せ場は一番最後です。主役であるオーロラ姫とデジレ王子のグラン・パ・ド・ドゥが最高潮となります。

グラン・パ・ド・ドゥ

主役ダンサーによる、男女の踊りのことで、流れが決まっています。

アダージョ(2人の踊り)
ヴァリエーション(男性のソロ)
ヴァリエーション(女性のソロ)
コーダ(高いテクニックが必要な2人の踊り。一番盛り上がります。)

クライマックスで踊られるのが、グラン・パ・ド・ドゥです。

グラン・パ・ド・ドゥの前にいろいろな踊りが展開されるので、ここでも体力を使い切らないように注意してください。

青い鳥のパ・ド・ドゥ

グラン・パ・ド・ドゥの少し前に盛り上がるのが、青い鳥のパ・ド・ドゥです。これもグラン・パ・ド・ドゥ形式になっていて、超絶技巧ちょうぜつぎこうを見ることができるシーンです。男性ダンサーが青い鳥にふんし、女性ダンサーが塔に閉じ込められているフロリナ王女を演じます。

この青い鳥のパ・ド・ドゥはかなり期待されている若手ダンサーが踊ることが多いので、要注目です。ときに、トップダンサーが踊ることもあります。そうなると、オーロラ姫とデジレ王子、青い鳥とフロリナ王女の2組のトップダンサーをみれることになるので、かなりのお得感があります。

この青い鳥のパ・ド・ドゥはダンサーが振付をしたと言われています。自分の技術を見せるために振り付けられ、完成度が高かったため振付のマリウス・プティパもそのまま採用せざるを得なかったようです。そのため、ダンサーのテクニックを堪能できるパ・ド・ドゥになっています。


(英国ロイヤル・バレエ団:最高位であるプリンシパルのヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール。トップダンサーが踊っていてかなりのお得感。)

グラン・パ・ド・ドゥ

そして最後に一番盛り上がるのグラン・パ・ド・ドゥです。特に2人で踊るアダージョは寝てしまう危険性が高いので、体力を残しておきましょう!

振付もいろいろなバージョンがあるので、お気に入りの振付を見つけてください。このグラン・パ・ド・ドゥはガラ公演(いろいろな作品のグラン・パ・ド・ドゥを何個も踊る公演)でよく見かけます。


(吉田都さん、熊川哲也さん)
僕は12:12~の振付が好きです。ちなみに、このステップがないバージョンもあります。ちなみに、ちなみに、吉田都さんはオーロラ姫を30代前半で封印してしまいました。それほど難しい役ということですね。

このグラン・パ・ド・ドゥのあと、大団円だいだんえんを迎え幕が閉じます。

かなり長丁場の公演になるので、体力バッチリで行きましょう!!

kazu

以上、初心者のためのバレエ「眠れる森の美女」でした。
ありがとうございました。